私が甘えて我儘を言ったときの
あなたの口元だけ 覚えているの
確か 優しい眼差しも
温かな体温も 私は覚えていた筈なのに
可笑しいわ あなたの輪郭は
驚くほどおぼろげなの 忘れそう
紫陽花が綻ぶ頃に
出会ったあなたの 微笑みだけ覚えている
あなたを困らせてばかりいたからかしら
あなたの梅雨のような穏やかな微笑だけが
私のものとなって
紫陽花を見ると思い出すわ
あなたの優しさ
そして私には最後まで語らなかった
私の知らない苦渋を
そしてそれを尋ねなかった私の狡さ
何時の間に 私はそんな生き方を
選んでしまったのかしらね
それを分かち合っていたら
私とあなたは
今も並んで歩いていたかしら
でもそれは
儚い夢ね
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蔦、お題「苦笑」
20070614初校
20070628二校
初々しい蕾の横
懸命に咲いた枯れかけた花を
そっと摘み取ろうとした
その赤に殺さないでと言われた気がして手を止める
なんだか悲しいのに笑える
摘み取れなかった私の想いはテラコッタの中で
今日も空に焦がれている
薄墨色の空から
水が落ちてくる
落ちてくる
落ちてくる
落ちてくる
落ちてくる
こうしてここに空を見上げ
逢いたい人を想う
押し出しても
あきらめても
どうしても
またあふれくる
川になり
海になったら
いつか船をこいで渡ろう
願い事を胸の中で呟きながら
神社でおみくじを引いたら
「待ち人来たらず」
だったので
引かなければよかったと後悔した
何年も自分に恵まれない
子供の顔を今年こそは見たいんだ
占いなんて信じない
単に確率の問題
たかがそんな事
振り切ろうと思えば思う程
願いが願いであることが沁みてしまう
信じないなら
初めから引かなければいいのに
仕方ないな
何処かに旅行に行って
その土地の神社で
もう一度おみくじを引いてみよう
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2007/06/14作成。
蔦、お題「待ち人」
微かな遠雷が
この耳に合図のように届いた
転がり落ちる地上の音色
凄まじい落雷の音に
恐怖と憧れを合わせ持つ
それははじまろうとする恋にも似て
私は足をとめる
降りはじめた雨に
植えられたばかりの稲がそよぐ
押さえてもなびく髪のように
暁鐘が鳴り響く朝の大気は
生まれたての太陽と共に
生命の目を覚まさせる
鳥が羽ばたき始める
東の空が明るくなって風を呼ぶ
無音の夜が終わりを告げる
それが合図だ
生き物たちは一日の始まりを知る
植物は蕾を綻ばせ
人間達は起き出して
生命の音は少しずつ増えていく
何気ない朝に
感謝する日
それが今日だ
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20070614作成
蔦、お題「合図」
手のひらにあたためて
胸に抱える
あたためた想いと時間が
たとえ孵ることがなくても
こうして
手を重ねて抱きしめて
夢を描いた
幸せな時間
2007/06/11(月) 09:52:55
初めから親の鳥なんて居ませんよ
どんな鳥も 卵から孵って
育っていって親鳥になるんです
初めての授業で上手く出来ずに
終わった後 泣いていたのだと聞いた
塾にアルバイトで入った十八歳
机の上で勉強だけ
していれば良かった高校生には戻れない
これからは社会の中に入って
生きていく術を学んでいかねばならない
上司は
敢えて授業の数を減らさなかった
減らす方がショックが大きいだろうと
色んなことがあるから
その位で駄目だとは思わせたくないと
本人には告げない気持ちを
他の講師の前で穏やかに言った
二度目の授業は
すこぶる上手くいったらしかった
上司は自分のことのように
喜んで また 他の講師に話した
初めの失敗から
一生懸命学んで
次の時はどうすればいいか
必死に考えた成果だろう
初めから親の鳥なんて居ませんよ
どんな鳥も 卵から孵って
育っていって親鳥になるんです
雑務の人間が時間を減らしたために
雑務もやらなくてはならないらしい
電話応対一つとっても
一度社会に出た人には敵わない
宛名書きも 大事な仕事
仕事に要らないことは何もない
大学の勉強も一生懸命してください
遊ぶ時間も大事な時間です
そして いずれ社会に出て
一人前に働くための第一歩が
今なのですよ
塾講師の卵
これから沢山の出来事と
沢山の生徒に出会いながら
生徒の成長と共に
あなたも育っていけばいい
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お題「卵」
070610作成。
初めて見た色はきっと
まぶたの中の朱色
生きている私に理屈抜きで出会った
そして最後に別れるのはきっと
まぶたの中の朱色
生きていた私に理屈抜きで別れる
その生きる間に
たくさん
たくさん
たくさん出会いたい
昨日の私とは少しずつ
違う私になって
たくさんの人に
たくさんのものに
たくさんの優しさに
たくさんの悲しさに
たくさんのこの世にある全てに
2007/06/07(木) 17:13:23
幾億年もの時を
この蒼い惑星は在り続けた
その時間の末端に生れ落ちた 私
その時間の末端に生れ落ちた あなた
無数の生命に囲まれた広大な大地の上で
同じ時を刻む今に 私とあなたは居る
こんな奇跡を誰が信じるだろうか
私 と あなた が繋がった今日を
一体誰が信じられようか
しかしそれは事実なのだ
ツバメが巣を作るように
稲妻が落ちる時一瞬閃くように
蔦が太陽を掴まえようと伸びるように
全てはきっと必然だったのだ
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御題「出会い」
070607作成。